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 CanarYHoliC+゜ 

[コメント] 173

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 初、  2016/08/29 19:10:06  削除依頼

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――無知なカナリアは、本当の愛を知らなかった。
(今日もその愛に気づかずに、カナリアは美しい声色で鳴く)

 

■CanarYHoliC
◎拍手、よろしければしていただけるとうれしいです!

  


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No.152  初、  2016/10/15 00:35:13  削除依頼

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「流石に官能という言葉の意味は知っていたか、セシリア」
「私はそこまで馬鹿じゃないわよ! というか何でそんな本を!!」
「そんな本とは失礼だな、セシリア。リレッタ王国では、史上最高と評される男女の恋愛を描いた究極の相愛な物語と言われているぞ」
「貴方が言うと卑猥に聞こえるのは何故かしらね……」


 カーティスはその本を、面白いから読んでみろと言って手渡してくる。タイトルからにして官能とはほぼ遠いように思えるが。タイトルに騙されてはいけないなあと思いつつこれは後で読むわと言い本の山積みの隣に置く。

 その場に適当に重ねておいた山積み本を手に取りカーティスを放っておいて読み始めようとするがカーティスが私から本をまた奪う。


「ところで、書斎室に引きこもってばかりで昼ご飯を食べてないだろう? まずは食事でもどうだ、セシリア」
「普段、ワーカーホリック並みの貴方から直々昼ごはんの誘いがあるとは思わなかったわ」
「たまにはいいだろう? 夫婦の営みとして距離を縮めておきたいしな」
「あら、残念ね。距離が近づくことは一生ないわ」


 私はカーティスから奪われた本を諦めてさらに山積みとなっている本をとり活字を読み進める。だが、カーティスは私を放っておくことはなく急に手を掴まれた。

 読んでいた本がバサッと落ちて、何とカーティスを睨み付けるが彼はいつも見せる冷たい翡翠の目で私を見下ろしていた。


「お前には拒否権はない。もしこの手を拒むなら、無理やりにでもお前が一番嫌がるお姫様抱っこをしてまででも私の部屋に連れていくぞ?」
「はあ!? お姫様だっこなんて嫌に決まっているでしょう」


 彼だけにはお姫様抱っこなどされたくないに決まっている。恥ずかしさが極まりない上にみじめな気分になる。

 それだけは阻止しなければと離してと何度か抗議するがカーティスは、手を掴んだまま私にこう囁いた。


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No.153  初、  2016/10/15 00:38:40  削除依頼

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「セシリア。自分の置かれている立場を弁えたほうがいいぞ」


 その声はとても低くとても威圧感があった。背中に静かな電流が走る。私は、自分が置かれている立場を強制的に思い出す。「戦利品」という立場を。抗議していた口を閉ざし大人しく噤む。


「流石貴方だわ。本当に卑怯よ」
「卑怯でも何でも言うがいい。では、行くぞセシリア」


 皮肉をもらしながら大人しく彼の後へ着いて行くことになった。どちらにせよ、お姫様抱っこされないだけマシなのかと自分自身に言い聞かせておいた。
 
 深いため息を零して、私はカーティスに手を掴まれたまま半ば強引に書斎室を出る。書斎室を出ると、扉付近には彼がいた。薄紫の目とばったり合うが私は思わず逸らす。


「スレイ。お前はグレート・ホールへ行き私とセシリアの食事を私の部屋まで持って来い……いいな?」
「はっ、カーティス様」


 ふとカーティスがそう――スレイに言った。スレイは私を何か言いたげにしていたが一瞥したのちに去って行った。私はそっと胸をなで下ろす。


「お前たちは手がかかるな……」
「お前たち?」
「こちらの話だ。私の部屋で食事をしよう。ついでに夫婦の営みもしようか、セシリア」
「食事だけね。後は嫌よ、お断りよ、断固拒否!」
「はっ面白い否定の三段活用がきたな」


 まあいいとカーティスは言いながらもやはり私の手を掴んだまま彼の部屋へと行くことになった。部屋にたどり着くと手を離してくれた。


「で、私を連れてきた本当の理由は何?」


 ソファーに腰掛けるカーティスに私は早速問い質す。カーティスは苦笑いを浮かべる。


「唐突だな」
「貴方だって唐突が多いじゃない。本題からずれずに教えてよ」
「教えるも何も一緒に食事をしようとしただけだ」
「はぐらかさないでよ。普段ならそんなことをしないじゃない、企んでいるのはわかってるわ!」


 私は彼を睨む。カーティスが食事を誘うなど余程のことだ。裏がある、企みがあるのは見え見えである。しかし、カーティスは疑い深いやつだなとやれやれと困ったように笑む。


「ただセシリアがここ数日、食事もまともに摂っていないと周りも私も心配していたからな」
「え……」


 彼から零れた意外な言葉に私は目を見開かせてしまうのだった。


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No.154  初、  2016/10/15 00:40:48  削除依頼

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 彼から紡がれた言葉に戸惑いと見透かされている状況に思考が停止した。馬鹿みたいに図星だと言っているのと同じだ。皆が私を心配しているということに驚きである。

 しかし、戸惑いと同時にあの出来事が走馬灯のように流れ思考が奪われたのだ。カーティスは、私の反応見てわかりやすいなと零す。


「スレイと何かあったか?」
「!?」


 次に彼が吐いた言葉にびくりと肩を震わした。過剰に反応してしまう。

 スレイという名前に思考は戻るが、王子様は相も変わらぬ無愛想な表情のまま見逃すことなく突いてきた。


「やはり、スレイか……お前に憂いある顔をさせている原因は」
「! ち、違う!!」


 思わず、声を張り上げてしまう。原因は私自身。スレイは何一つ関係ない話だ。カーティスは、少しだけ険しい顔になる。


「お前がいくら否定をしても私にはわかるぞ……スレイが関わってるのだな」
「違うわ! 私が勝手に……スレイは関係ないわ」


 私がいくら否定しようとも彼はスレイが関わっていると言い張る。いや、言い張るというより確信に近い断定だった。


「否定しなくていい、セシリア。あいつの肩を持たなくてもいいぞ」
「別にスレイの肩を持っていないわ。関係ないから否定しているの!」


 それでも私は否定し続ける。カーティスは私に認めさせようとするのだが、彼には知られたくない意地があり否定した。

 幾度か、カーティスも私も無用な言い合いを繰り返していると曲げたのは珍しくもカーティスの方だった。


「セシリア。お前が認めないなら言い方を変えよう。何にがあって悩んでいる?」
「何にってそれは……っ!」


 唐突にそう彼は私に問う。私は、口にしようとして慌てて噤む。すべてを言い出しそうだった。

 カーティスは強情だなと苦笑いを零す。強情で悪かったわねと舌を出して睨む。


(危うくあのことを言いかけるところだったわ……泣いていたところをスレイに見られて気まずいなんて言えないわ)


 弱音を吐露する姿をスレイに看られて気まずかったなどカーティスだけには言いたくないのだ。

 意地もあるが揶揄われるのが一番嫌だというのが私の本音であり何があっても言わないでおこうと唇を強く噤む。

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No.156  初、  2016/10/15 00:47:48  削除依頼

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 すると、カーティスはソファーから立ち上がりそのまま私へと近づいてきた。私は咄嗟に警戒をして構えをする。

 何をされるのだろうかという反射神経だった。だが、彼は手を伸ばし私の頭を撫でるだけだった。また、目を見開く。


「お前が憂いある姿を見るのは好ましくない。言えないことならこれ以上は問わないが、周りが心配していることだけは覚えておけ、セシリア」
「カーティス……」


 顔をあげるとあの美しく燦然と輝く翡翠色の目と合う。優しい手つきとその目に私は戸惑う表情で彼の目に映っていた。


(何故……ひどいぐらいに優しいのよ)


 時折見せるその優しさが、どのように反応していいのかわからなくなる。だけど、その優しい手つきと目は嫌いにはなれなかった。

 カーティスの手を振り払うことが出来ないままでいると不意に彼から離れた。


「それにセシリアが大人しいと何時だって空は槍が振り続けそうだ」
「なっ……! それはどういう意味よ、カーティス!?」


 揶揄うようにカーティスはそう言った。カチンときた私は、離れた彼に後ろから蹴りを入れる。

 だが、毎度ながらに躱されていつものようにカーティスは不敵な笑みを浮かべる。


「少しずつだが、元に戻って来たな、セシリア。お前は、お転婆の方がよく似合う」
「! そうね……貴方の言う通り、私は動いているのが性に合っているみたいだわ」


 カーティスの言葉に私はふっと笑う。本人には言わないが、少しだけ元気が出た。何時もの調子に戻り彼に蹴りを入れようとするが躱され続ける。


「さて戯れは此処までだ、セシリア。当の目的である昼食を済ませようか」
「ええ。さすがに私も動いておなかがすいてきたわ」
「決まりだな――スレイ」


 彼は私の足を掴み、蹴りを止められる。当の目的を思い出し私は頷いた。カーティスはスレイの名前を呼ぶのと同時に扉をノックする音が聞こえた。

 カーティスは入れと促しスレイが中に入ってきた。私はまだあのことがありスレイを見ずカーティスを見つめる。



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No.157  初、  2016/10/15 00:48:21  削除依頼

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 不意に翡翠色の目と合う。カーティスの目は微笑ましそうに私を映す。何故、そのような目で見られるのはわからないが、スレイと目が合うよりは良かった。


 スレイの視線を感じながらも、彼は食事を用意できましたと言いテーブルに準備をし始めた。カーティスはその手際を見ながらも口にする。


「では、昼御飯といこうか。セシリア、スレイ。二人で食べろ」
「え!? ちょ、ちょっとカーティス!」


 カーティスは最高の笑みを浮かべてそう言った。間抜けな表情をしているのは私だけではないだろう。スレイも驚きを隠せないと言った感じだ。私は慌ててカーティスに近づき小声で問い詰める。


「何か問題でもあるか、セシリア?」
「問題大ありよ。何故、スレイと一緒に……」
「それなら聞くが、スレイと一緒に食べられない理由があるのか?」
「っ……あ、貴方ってずるいわ」


 言葉を濁すしかなかった。そう言われてしまえば此方が理由を言わないといけなくなる。

 そのことがわかっていてカーティスは言うのだ。狡い男だ。狡いは褒め言葉だとカーティスはお得意の不敵な笑みを浮かべて時計を見る。


「そろそろ、時間だな。私は、午後から謁見室の用事がある」
「用事って……ま、まさか」


 さーっと嫌な予感だけがする。カーティスは、扉付近まで行き笑みを浮かべたままドアノブに手をかけた。


「もう私は行く。セシリア、スレイ、有意義なランチタイムを」
「あ、待って、カーティス!」

 
 私の制止する言葉と手を伸ばすが、虚しくもカーティスは彼自身の部屋を出て行った。その場に残されたのは私とスレイのみとなる。


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No.158  初、  2016/10/15 00:51:31  削除依頼

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 伸ばした手があてもなくゆらゆらとぶら下がる。私はスレイを見ることが出来ないまま部屋の中は静寂が訪れる。


(本当あの男は狡い性格だわ! 最初から私をここに連れてきたのもスレイに食事を運ばせたのも……カーティスの仕業ね)


 カーティスの手のひらのうちだったのだろう。端から私と食べるのではなく、スレイと食べさせる機会を作るための策だ。

 私はまんまと引っ掛かってしまったということだ。深いため息をひとつ零す。


(有意義なランチタイムをって……気まずさから逃げ出したいわ。でも、昼を準備してくれたわけだし……)


 心配をかけている事実はわかっている。しかし、これは私の問題だ。スレイとの気まずさをどうすればいいのかわからないのだ。

 彼にあのことを問われるのも言われるのもされたくない。だからと言ってこのままの状況では周りに迷惑をかける。


「……おい、セシリア=アルバーン」


 不意に名前を呼ばれて反射的に振り向く。スレイだ。久しぶりに聞いたような錯覚に陥る。

 それほどまで数日、話していなかったのだと感じる。スレイは私を真っ直ぐに見つめながらテーブルを指さす。


「カーティス様のご厚意だ。昼ご飯を食べるぞ」
「……言われなくてもそうする気でいたわ」


 そう言って目の前に食事の用意をされたテーブルへ行きソファーに腰掛ける。それと同様に反対側にスレイが腰をかけた。

 今日の昼ご飯はどうも、パスタらしい。色とりどりの種類があった。ティーカップには紅茶が注がれている。素直に美味しそうだと思った。取り皿を持ちながらも食べれる分を盛りいただきますと言い口の中に頬張る。


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No.159  初、  2016/10/15 01:18:09  削除依頼

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 スレイと気まずい中でもお腹は正直だ。静かな空間に二人は食べる。パスタをナイフで巻きながらお腹を満たしていく。

 ゆっくり舌の中で美味を噛み締めて紅茶を飲む。おかげさまでお腹が満たされた。ごちそうさまでしたと口にする。


(私が好きなものばかりね……紅茶も、パスタの好みも)


 私の好きなものばかりだった。調理してくれた人たちを想像する。メルディとアリッサだろう。私の好みを知っているのは彼女たちぐらいだ。


(心配させている……)


 カーティスの言葉を思い出し周りに心配と迷惑をかけているのだと改めて身に感じたのだ。

 後でメルディたちにお礼を言いに行こうと思いながら不意に鋭い視線を感じる。射抜くような獣の眼光。それは、スレイだった。

 スレイは私は見つめていてはっと気づく。彼は既に昼ご飯を食べ終えていて私を待っているようだった。

 どうりで静かなわけで、そもそもそこまで会話をしない仲だが、ここまで静かなのは珍しい。彼は、食べ終えた私を見て静かに口を開く。


「……セシリア=アルバーン」
「な、何?」
「明日遠出をする、お前も一緒に」
「え、あ、明日!? な、何で……」


 いきなりの遠出の話。唐突な話題に私は首をかしげる。しかし、スレイはごちそうさまでしたと言いながら食事を片付ける。


「別に何でもいいだろう? 遠出は決定事項だ」
「決定事項とか言われても、私は嫌よ」
「お前の意思などどうでもいい、カーティス様の了承は得ている。明日は遠出。午前9時にお前の部屋まで迎えに行く」
「か、勝手に決めないで。私の予定は……」


 片付けた食器を持ちながら彼は去ろうする。だが、私は断ろうとして立ち上がりスレイに近づくが彼は立ち止まる。

 同時に彼から私にもっと近づき視線が合う。薄紫の瞳が淀みもなく透き通る。


「……もし、断りでもしたらあのことをカーティス様に言うぞ?」
「!?」


 反射的に口を噤む。スレイは、私の弱い部分を知っている。カーティスだけには知られたくない話だ。スレイは、私から離れると器用にドアノブを回す。


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No.160  初、  2016/10/15 01:18:47  削除依頼

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「……賢い選択をしろ。じゃあ、俺は片付けてくる。明日午前9時、お前の部屋まで迎えに行くから、それまでに行く格好をしておけよ」
「あ、ちょ、ちょっと!!?」


 そう言い残してスレイは、去って行った。虚しく閉じた扉を見つめながらも膝が崩れ嘲笑う。


「最初から……遠出するためにスレイもカーティスとぐるだったのね」


 二人がぐるだったということは明白だ。カーティスが私を連れ出したのもスレイが言ったことなのか、それともカーティスが考えたことのなのか。

 どちらにせよ、私は二人の思惑にはまるしかなかった。盛大な深いため息をひとつ吐く。


「……明日、何があるのかしら」


 深く聞かなかったが遠出とはどこへ行くのだろう。その前に何があるのやら。

 スレイからの強制的な遠出には、彼の意図がよく見えない。考えていることがさっぱりである。


「ともかく……スレイと出かけるのか」


 まだ気まずさが残る中での遠出はどこか不安要素だけしかない。二人で出かけるのだろうか。

 二人きりとなると気まずさでどうにかなってしまいそうである。想像するだけで苦笑いが自然に零れていた。


「あーもう考えるのやめた。明日は明日! 今は、続き読みに行こう」


 立ち上がっては両頬を軽く叩く。考えるのをやめた。考えれば考えるほどぐるぐる回るだけで頭がいっぱいになる。

 明日のことは明日に任せればいい。私はそう自分自身に言い聞かせて部屋を後にするのだった。


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No.162  初、  2016/12/04 01:11:08  削除依頼

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           ○゚*.:*・゚.:*・*:.。



 穏やかな朝日が、徐々に照らし春の朝を迎えた。朝日とともに目が覚めた私はゆっくりとベッドから出る。いつもより早めの起床だ。

 視界が白く薄っすらとぼんやりしている。まだ眠い証だ。目をこすりながら、鏡台へと向かい椅子に座る。

 水が汲まれた器で手で掬い何度か顔を洗う。ようやくそこで視界が良好となった。さっぱりした。鏡台に置いてあったブラシで髪をとく。

 長く鬱陶しい髪を編みこみにして紅いリボンでひとつにまとめる。ある程度まとめるとパジャマ姿からスレイに提示された動きやすい服へと着替える。ブーツに履き替えて、準備は整った。時計に目をやる。


「8時半、よし30分前に用意できたわ!」


 得意げに笑う。スレイにいつもいつも準備するのが遅いと言われている。今日は言わせないつもりでいた。

 だから、普段よりは支度を早めに終わらせた。後は、剣を携えて終わりのはずだが、剣を触ろうとして手を止める。


「私には合わない剣……」


剣を見るたびに自分の弱さを思い知らされる。スレイの言葉が頭の中で響く。


『お前が携えている長剣との相性が悪い。武器は相性のいいやつを使うべきだ』


フラン兄さんから頂いた剣では上手く私には扱えない。その言葉がぐるぐると未だに駆け巡る。

 すると、トントンと軽快なリズム扉を叩く音がする。はっと我に返り、その場に置いてあったナイフだけ仕込み慌ててドアノブを回す。


(スレイ、もう来たのね。ふっ。驚く顔を拝んでやろうじゃないの)


 時計を一瞥すると、いつの間にか迎えに来る時間になっていたみたいだ。ドアノブを回しながら扉を開ける。


「スレイ!! 今日は早く用意できたわよ!」
「お、今回は早いね。そんなに出かけるのが楽しみだった、姫さん」
「うん? 姫さんって……え、エヴァルト?」


 得意気な顔から一気に驚いた顔をする私。そこにいたのは、スレイではなくはーいと手を挙げてにこやかな笑みを浮かべるエヴァルトだった。


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No.163  初、  2017/01/09 14:38:39  削除依頼

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「おはよう、姫さん。もしかして、スレイさんと二人きりデートの方が良かった?」
「いやそれはない」
「即答だね、スレイさん振られているよ」
「どうでもい。それよりも、お前準備できているのか?」
「あ……スレイ。というより、エヴァルトがいるっていう状況が理解出来ていないのだけど……」


 エヴァルトは何時ものように冗談を言い後ろに視線を送る。彼の後ろには壁に凭れているスレイがいたのだ。私は、エヴァルトが此処にいることもそうだが、何より今の状況について理解が出来ていなかった。

 私の問いに答えたのは、エヴァルトだった。エヴァルトは得意気に笑う。


「ふふっ。実は姫さん。今日は何と俺とスレイさんと姫さんでデートと言う名の遠出をします!」
「え、この三人で?」


 思わず私は、エヴァルトとスレイと私を指さす。目を見開かせて驚きを隠せなかった。何の組み合わせだ。エヴァルトは大きく頷く。


「そうだよ。俺たち、今日主から非番貰っているから。私服の恰好です、どう惚れた?」
「大丈夫、それはないから。けど、納得したわ、だから二人とも私服なのね……」


 彼らの服装が私服となっていた。いつもの二人なら仕事する、軍服のような恰好をしている。しかし、普段の私服となると二人ともラフな恰好である。相変わらず姫さんは、とぼやきながらエヴァルトはため息を吐く。


「姫さんは冷たいね。普通の女の子ならイケメン二人とデートとなれば喜ぶところだよ、でも姫さんらしい反応でそれもそれで堪らないけどさ」
「それはどうも。だけど……三人で出かけるなんてどういう風の吹き回しなの?」


 乾いた笑みを浮かべてエヴァルトに問う。エヴァルトは、ただ遊びたいだけだよと濁される。すると、壁に凭れていたスレイが私へと近づいてきた。

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No.164  初、  2017/01/09 14:48:16  削除依頼

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「別に理由などない。もたもたしないで、行くぞ」
「どういうことよって……あ、ちょっと無理やり引っ張らないでよ、スレイ!」


 私の手を掴みずるずると引っ張り歩き始めたのだ。スレイは、私の言葉を無視して先へ先へと行く。

 いくら理由を問い質してもスレイは全く答えない。そんな中、エヴァルトは私の隣に立ち歩く。


「あー何してるんですか、スレイさん。無理やり引っ張ったら姫さんが可哀想ですよ」
「いちいちうるせー。兎に角、馬車を待たせてるんだ、時間が惜しい、さっさとしろ」


 はいはいとエヴァルトはスレイに言いながらも姫さん、諦めてねと笑みを零された。

 私は、何が何だかわからずスレイに手を掴まれたまま半ば諦めて彼の後をおとなしくついて行った。

 外へ出るとあの日、エルファーレ王国に迎えに来た馬車が出迎えていた。そこでようやくスレイが私の手を離した。

 スレイは、乗れと一言促し私はわかったわよと言いながらエヴァルトともに馬車へ乗り込む。私の前にエヴァルト、スレイは私の隣へ座る。

 全員が乗り込んだことで馭者が鞭で馬を叩くと馬は一声鳴き、馬車がゆっくりと動き始めた。淡く白い朝を駆けだす。

 馬車が動き出すと景色が流れ始めた。此処へ来て何か月か経過したが、景色は見慣れたものへと変わってきた。頬杖をつきながらも流れる景色を見ていて気づく。


「そういえば、どこへ向かおうとしているの?」
「アルンフィーネだ」
「アルンフィーネ……って首都オリファンの隣の市だっけ?」


 スレイとエヴァルトに問うと、スレイは持ってきた本に目を落としながらそう答えてくれた。


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No.165  初、  2017/01/09 15:33:53  削除依頼

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 アルンフィーネは、リレッタ王国の首都オリファンの隣の都市だ。確か、オリファンの次ぐ第二の都市と言われていた気がする。


「そうだよ、姫さん。よく知っているね」
「まあ、一応。暮らしていく中である程度の地理を知らないのは嫌だからね」
「へえー、意外にも真面目だな。普段は無知なくせに」
「うるさいわね、スレイ。それで、そのアルンフィーネに行く理由は?」


 数日間、書斎室で籠っていたせいかリレッタ王国の地理や歴史など頭の中に入っていた。此処で披露することになるとは。

 偏にスレイに感心されてしまいうるさいわねと反論しながらもスレイは真実を言ったまでだろと笑う。そんな私とスレイにエヴァルトは宥めながらも言葉を続ける。


「アルンフィーネはつい最近大きな娯楽施設が出来て、観光都市として有名何だよ」
「ワンダーロワイヤルもすごいの?」
「ワンダーロワイヤルよりも何倍いや何十倍だね、様々な娯楽施設が立ち並んでいて面白いんだよ」
「へえーそれはすごいわね」


 エヴァルトが目を輝かせてアルンフィーネのことを教えてくれた。娯楽施設が多く立ち並ぶ都市、それがアルンフィーネらしい。

 第二の都市と言われるのも納得できた。あのワンダーロワイヤルよりもすごい大きさを誇るようである。どんな場所なのか少しばかり興味を湧く。

 エルファーレ王国ではそのような娯楽施設があまりない。素直にすごいと感心してしまう。エヴァルトが、にまにまと笑みを浮かべる。


「姫さん、楽しみになってきた?」
「ええ、そうね。少し楽しみだわ」
「それは良かった。いっぱい俺とスレイさんと姫さんで盛り上がっていこうね」
「私とエヴァルトとスレイでね……」


 ふと、未だに本に視線を落として隣で読んでいるスレイを見る。スレイは私に接する態度は変わらない。


(今日はてっきり二人きりだと思っていたけど、エヴァルトも居るのよね……)


 私は此処で初めて安堵の息を吐く。見栄を張っていてもやはり、スレイと二人だと気まずいものがあった。

 

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No.166  初、  2017/01/09 15:51:29  削除依頼

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 エヴァルトがいると思えば、三人だから安心してしまう。彼を交えて話していればスレイとの気まずさはどこかなくなる。これなら遠出をしても気になることはないだろう。


「あ、ちなみに姫さん。おなか、すいてない?」
「そういえば……すいているわね。朝ごはんを食べてないわ……アルンフィーネで食べるの?」


 エヴァルトに言われた通り、確かにおなかがすいてきた。まだ朝ご飯を食べていないから減るのも仕方ない。


「アルンフィーネまで2時間かかるよ」
「2時間!? もう昼手前になるわね……食べてきたらよかったわ」


 出かけの準備だけのことを頭に入れていたせいか朝食を食べる時間を考えていなかった。すると、エヴァルトが大丈夫と言い下からバケットを取り出す。


「俺もスレイさんもまだ食べてないから、じゃーん、作ってきました!」
「おお! すごい!!」


 エヴァルトが、バケットの中を見せてくれる。中には、色とりどりのサンドイッチだった。種類が豊富でじゅるりと唾液が口の中で拡がる。

 サンドイッチ以外にも、栄養豊富そうなサラダやフルーツがあった。フルーツに至っては、りんごがうさぎの形に象られていた。目を輝かせて見る私に、エヴァルトは得意げに笑う。


「姫さんが好きものばかりしか作ってないからね!」
「言われてみれば……私の好きなものばかり。というか、作ったって……エヴァルトが?」
「エヴァルトが作った。こいつ、手先は無駄に器用だからな……美味い」


 私の問いに答えたのはスレイだった。先まで本を黙々と読んでいたスレイが手を伸ばしひとつまみサンドイッチを食べる。

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No.167  初、  2017/01/09 15:53:10  削除依頼

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 私は目を開かせてエヴァルトを見る。まさかと思ったが、よくよく考えてみれば彼は手先は器用だから料理が出来るのも納得した。

 エヴァルトがスレイさん、無駄にって何ですかと反論しながらもスレイが珍しくも美味しいと言ったことは満更でもなさそうだ。


「姫さんの口に合えばいいけど……よかったら、食べて?」
「あ、ありがとう……ねえ、もしかして昨日の昼ごはんも作ってくれたのはエヴァルト?」


 ひとつまみ私はサンドイッチをとる。頬張りながらも、彼に聞く。エヴァルトは、首をかしげる。


「どうして俺だと? メルディさんや、アリッサちゃんの可能性があるというのに」
「何となくね、今日も昨日と同じで優しい味がしたから」


 今日も昨日と同じ味がした。優しくて温かさがあるものだった。間違いなくエヴァルトが作ったのだろう。そんな予感がした。


「まあ、昨日のパスタも気に入ってくれたなら嬉しいよ」
「じゃあ、エヴァルトが?」


 今度は、私が首をかしげる番だった。エヴァルトはひとつ頷く。


「そうだよ、昨日も俺が作った。でも今日は作る予定はなかったんだけど朝は、急遽作ったんだ。サンドイッチを作って欲しいと言った人がいるからね~」
「言った人? 誰が?」


 エヴァルトが視線を送る。その先を辿るとスレイだった。スレイは、黒い笑みを浮かべてエヴァルトの顎を掴む。瞬時の技だった。


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No.168  初、  2017/01/09 18:59:25  削除依頼

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 私とエヴァルトは二人して目を見開かせながらもエヴァルトは徐々に表情を青ざめていく。おまけに骨のメキメキと奇妙な音が響く。


「……何か言いたいことはあるか、エヴァルト?」
「いえ、な、何でもありませんよ! スレイさん。それより、メキメキって音が鳴っていますよ! 関節が外れそうなんで離してくれませんかね!?」


 涙を浮かべて懇願するエヴァルトにスレイは手を離す。エヴァルトは、自身の顎を優しく撫でていた。相当痛かったようだ。

 スレイは満足げに笑うのだが、私は苦笑いを浮かべて理解してしまった。


「図星ね、スレイ。貴方がエヴァルトに頼んだのね」
「し、知らねえよ。ただ俺が、おなかがすくからついでに作ってもらっただけだ」
「スレイがそう言うならそれで構わないわ、素直じゃないのは変わらないわね」


 視線を波のように泳がせるスレイ。わかりやすい反応である。彼が素直じゃないことは、今に始まったばかりではない。

 スレイはうぜえと悪態を吐きながらもエヴァルトが作ってくれたサンドイッチを次から次へと頬張っていく。


「全くスレイさんは、素直じゃないですね。素直にならないと女性にモテませんよ」


 未だに自身の顎を撫ぜながら、エヴァルトは唇を尖らせて嫌味をひとつ零す。スレイはサンドイッチをごくりと飲みこむ。


「そこまでお前が言うなら、俺もひとつ素直になって暴露してやろうか」
「暴露って何を?」


 私は首を傾げながら、エヴァルトが作ってきてくれたうさぎの形を象ったりんごを頬張る。エヴァルトも不思議そうな表情でスレイを見つめていた。


「よく聞いておけ。こう見えてこいつはお前の栄養を考えてサンドイッチは作られたものだ」
「栄養……あ、言われてみれば確かに」


 栄養豊富なものしかざーっと見た限りでは作られていない。どれも健康に良さそうなものばかりである。まさかエヴァルトがと私は彼に視線を送る。

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No.169  初、  2017/01/09 19:10:37  削除依頼

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 すると、珍しくもエヴァルトが慌てた素振りを見せる。その慌てた素振りは珍しいので思わず私は目を見開かせてしまう。

 
「ま、待ってスレイさん。何を言おうとしてますかね!?」
「俺はあくまでエヴァルト、お前の助言を受けただけだ」
「嫌な予感だけしかしませんけど!? ちょ、ちょっと待ってください、スレイさん!」
「こいつ、国家薬剤師でありながら栄養士、医療士と様々な資格を持ってるんだよ」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべるスレイ。やってしまったという表情で顔を手で押さえるヴァルト。私は、スレイの言葉に素直に驚いてしまった。


「エヴァルトが何でも器用なのは知っていたけどもその……」
「ひ、姫さん、言わなくていいからね!?」
「意外にも真面目なのね、貴方って」
「嗚呼、姫さん言わないでって言ったのに! 尊敬の眼差しで俺を見ないで!」


 様々な資格を持っているということは、容易くないことだ。努力して初めて得るものだと私は考える。

 そう思うと、エヴァルトはお調子者のわりに真面目な人だと感心した。だから、彼が栄養に詳しいのも納得できた。

 エヴァルトはその場で項垂れて顔を埋める。落ち込んでいる様子で穴があれば入りたいとぶつぶつという始末だ。

 
「落ち込む要素がどこにあるか何時もわからないが、いい様だ、エヴァルト」
「スレイ……大人げないわね」


 スレイは、ふっと意地悪い笑みを零す。大人げないと私はただただ苦笑いだけを浮かべ、落ち込むエヴァルトを見る。


「けど、スレイの言った通りね。エヴァルトが落ち込む要素も何もないと思うけど。どうして落ち込むの?」


 そう私は問う。不意に思った疑問だった。彼が、此処まで落ち込む要素がわからなかったのだ。


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No.170  初、  2017/01/09 21:17:42  削除依頼

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 エヴァルトが顔を上げる。見るからに暗い顔つきで視線を斜めにして語る。


「いやーだって姫さん。資格ばかり持っている俺なんて……俺のアイデンティティとはかけ離れているでしょう?」
「アイデンティティね……確かにかけ離れ過ぎて感心させられるほどだわ」


 彼はどうやら、自分のアイデンティティを気にしているようだ。確かに普段お調子者が様々な資格を持っているなど個性からかけ離れていて偏に引くよりも感心させられるだろう。


「でしょう!? 俺のアイデンティティが崩れて嫌なんだよ!」


 エヴァルトは涙目になりながらだからバラしてほしくなかったのにと悲痛な叫びが零れ落ちる。私は、呆れを通り越して不思議とエヴァルトが可哀想に思えてきた。


「だったら何で資格とかいっぱい取ったのとか、扱いが面倒なあだとか思ったけど……その、大丈夫! エヴァルトは女たらしの最低男に変わりはないから安心して!」
「うわあ……姫さん。全然説得力のない励ましの言葉と本音をありがとう」
「あ、ごめん。つい……」
「ついね……いいんだよ、どうせ。資格を取るのは生きる術で必要なものだったし、今さら崩れても気にはしないから」


 思わず本音と説得力のない励まし方をしてしまった私は慌てて否定する。遠くを見つめるエヴァルトに言葉をかけようとするが見つからない。


(気にする要素がわからないしそもそも、ギャップがあっていいんじゃないのかと……あ、ギャップ!)


 私ははっとなり思い付いた。エヴァルトを励ます最高の言葉を。


「ねえ、エヴァルト! 資格を持っているってことはギャップ要素があっていいんじゃないの? 最近の女性は、ギャップ要素がある男性に惹かれやすいとかレレールで聞いたわよ!」


 ギャップ。それは一面性があるということだ。レレールへ出かけた時に、女性たちがギャップについて話していたことを思い出した。




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No.171  初、  2017/01/09 21:23:39  削除依頼

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 レレールの女性たち曰く例えばカーティス。カーティスは冷酷王や魔王など畏怖させる異名を持ち合わせているが、そんなカーティスが実は小動物が好きという一面性があれば惹かれるとか言っていた。


 カーティスが小動物好きには見えないが、怖い人物が小動物を愛でる様子などのギャップ、つまり一面性があるということがいいとのことだ。

 エヴァルトのギャップ要素として、普段女たらしのお調子者が影では努力し資格を持っている真面目な一面が彼のギャップだ。

 これはかなりの説得出来たのではないか。我ながらに思い付いたものだとフフンと鼻高くする。エヴァルトは遠く見つめていたがゆっくりとこちらを見る。


「……それは、姫さんもギャップ要素があるほうが惹かれるってこと?」
「え、私?」
「そう! 姫さんはどうなの?」
「そ、そうね。ギャップがあるほうが惹かれると言えば惹かれるかしら……?」


 彼が勢いよくそう私に問う。思わずその流れるままに勢いで答え、曖昧にそうねと頷く。ギャップ要素など考えたことはないが、あるほうが惹かれると言えば惹かれるものだ。

 しかし、異性にそのような要素を求めたことがない。されどこの場は、うなずいておいた方がいいだろう。事態の収拾が出来ると考えたからだ。私が頷いたことでエヴァルトの紅い瞳がきらりと潤む。


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No.172  初、 2017/01/09 21:33:24  削除依頼

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「そっか~姫さんがそう言うなら俺、そのギャップ要素を使って女の子をこれからも愛でていきたいと思います!」
「う、うん。最後辺りが最低だと思うけどまあ頑張って」


 どうやらいつものエヴァルトに戻ったようだ。あのよくわからない励ましの効果があったのか、元気が出たようである。さりげなく私の両手を掴みエヴァルトは微笑む。


「うんうん頑張るよ。特に姫さんを落とせるように頑張るね」
「何故に私!?」


 冗談だよとエヴァルトはケラケラと軽快に笑う。いつものお調子者の彼だ。私は無言でエヴァルトに掴まれた両手をはずし彼の手の甲をペチッと叩いた。

 彼はえ、と呻く。彼自身の手の甲を優しくなでながら姫さん、ごめんって謝るのでいいよと笑みのないまま頷いた。それ以上はエヴァルトは何も言わなくなり大人しくなった。

 私は静かにため息をひとつ吐くと隣で私とエヴァルトの会話を聞いていたであろう読書中のスレイが小さく一言ぼやいた。


「エヴァルトは……単純だな」


 スレイに言われたくないでしょうと私は心の中で突っ込みを入れる。本人に言えば、喧嘩になることは目に見えていたから。

 私はまたため息を吐くと、まだ残っているサンドイッチを頬張りながら移ろいでいく景色を見つめていた。

 それからしばらくして、アルンフィーネに着いたのは昼になる手前だった。
 


 
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No.173 茉梛-Mana - 49.97.106.75
2017/01/09 21:48:37 削除依頼

この小説、凄く面白いですーー!!
セシリアさん、カッコいい♪
これからも読んでもいいですか?



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No.174  初、  2017/01/14 01:46:50  削除依頼

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□ 

№172は私のサブアカウントです笑。昔使っていたやつなんですが、同一人物なので気にしないでいただければと思います!

□  茉梛-Mana -様

コメントありがとうございます(*‘ω‘ *)
面白いと言っていただいて嬉しいです!
セシリアカッコいいですかね?
カッコいいと言われるのはセシリア自身も嬉しいのでありがとうございます!
ぜひ読んでいただけると喜びます( *´艸`)

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No.175  初、 2017/01/14 02:37:43  削除依頼

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       ○゚*.:*・゚.:*・*:.。



 活気と愉楽が混ざった人々の声が、独特な地響きとなってあちらこちらと盛況を見せていた。何処を見ても人。前に後ろに、右に左と人で溢れ返っている。


「流石……リレッタ一の観光都市! すごいわ、どこもかしこも人、人、人よ!! 祭りや行事なんてないのにましてや、平日でこの多さはすごいわね」


 アルンフィーネ。リレッタ一の観光都市ともいえる此処は、観光客で溢れまるで祭りのようだった。私は馬車から降り立つと溢れる人の多さに感動していた。

 あまり人の多い場所へ出かけることがなかったためかすごく新鮮を感じる。どの人も楽しそうで、見ている私も楽しくなってきた。

 レジャー施設にアミューズメント施設、娯楽施設。それから商業施設など多く立ち並び、ワンダーロワイヤルよりも遥かすごい。どこから見て回ろうかとわくわくしてくる。早速、動こうとしておい馬鹿という声が聞こえるとの同時に不意に両肩を掴まれる。


「おい、どこへ行こうとしている。子供みたいにはしゃぎ過ぎだ」
「う、五月蠅いわね、スレイ。私が何時、はしゃごうが勝手じゃないの」
「嗚呼、そうだな。だけど、今お前馬車が見えてなかっただろう?」
「え? 馬車って……あ」


 両肩を掴んだのはスレイだった。頭上から厭味ったらしい声がして顔をあげるとスレイの眉間にしわを寄せて目の前で過ぎる馬車を指す。

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No.176  初、 2017/01/14 02:38:43  削除依頼

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 私ははっとする。このまま歩いていれば馬車に轢かれてしまっていた恐れがあった。ほら見てみろと言わんばかりに彼は深いため息を吐く。


「はしゃぐのは結構だが、前をよく見ろ。二度は助けないからな」
「わかっているわよ……悪かったわね」


 悔しいが素直に詫びを入れる。例え、気まずい相手であれ助けてくれたことには感謝しないといけない。とても癪な話だが。

 私の言葉にスレイは、不敵に笑い軽く私の額にデコピンして行くぞと前を歩き出す。

 デコピンされた額を押さえながらも、ニヤニヤと何か言いたげにしているエヴァルトに私は声をかける。


「何か面白いことでもあったかな、エヴァルト?」
「いやいや、何でもないよ姫さん! さあさあ、今日は楽しもう! まずはあそこに行かないとね」
「ってちょっとエヴァルト、手を引っ張らないでよ!?」


 黒く笑う私にエヴァルト苦笑しながらも誤魔化すように私の手を引っ張って前を歩くスレイの後を追いかて……向かった場所は、アルンフィーネのアミューズメントパーク、FAIRY・PARADE(フェアリー・パレード)という遊園地だった。


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